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日記

日記です

うちの父

「おまえのとこは社員旅行とかないのか」と言われ、ないと答えると「はぁ、むなしいなぁ」と言うような父である。


最近の若い人は飲み会を好まないとか、会社の付き合いを疎ましく思うとか、そういうのテレビでも新聞でも触れていると思うんだけど。
しかしそんな人が、去年帰ったときは、唐突に「スマホのながら歩きは危険だぞ」と、旬な台詞をいかにも神妙な顔をして言うんだから。
この2つの発言の、内容の噛みあわなさが全てを物語っている。

社員旅行とか会社のレクリエーション、付き合い、"横の繋がり"、"絆"、"だんらん"
私だとすぐに嘘臭さをかぎとって嫌厭したくなる言葉を父は鵜呑みにして使う。

だから、家族で食卓を囲む帰省の時は必ず「おまえ、ひとり暮らしだから、こうしてみんなで食べると美味しいだろ、ひとりで食べると味気ないだろ」と言う。

私はこういう言葉を好まないのだか、父は積極的に使う。


一般的によく言われてることを、果たして自分もそう思うのかどうか、本当にそうなのだろうか、なんてことは一切考えずに、おそらく大々的にそう言っているのだからそうなのだろう、くらいの気持ちで、というより耳から入ったものをそのまま脳を通さずに口から吐き出しているのだ。


家族でだんらんをすることは良い
ひとりで食べるご飯は味気ない
スマホのながら歩きは危険
社員旅行は社員慰安のための楽しい行事

(どれかトリプルファイヤーの歌詞にあっても良さそうなくらい。もはや誰も意味を問わずなんとなく耳心地がいいからと使われる言葉のオンパレード)

で、だんらん礼讚発言とかスマホのながら歩きはキケン!とかを、子を心配する父の不器用な愛、と捉えることも可能かもしれない。
だけど、これに私は昔から違和感があったんだ。けど、ついに先日の帰省でそれが解明された。

初日、夕食を囲みながら酒を飲み、母は食事の支度をしながら食べるといういつものスタイル。

その時、わたしはお馴染みの父からの仕事に関する簡単な質問をされ、もう忘れたけど、よくある「学校どうだ」とかそういう類いの。

で、私は手短に答えて終了。父も、そうか、と言っていた。

しかし次の夜もまた同じ質問を投げ掛け、うっとおしさを顔に出した私を見て、母が昨日も聞いたじゃないか、と牽制した。
そうか、と父は言い、私は、母は慌ただしくしていたけど聞いていたのかと思い、そしてつまり父が私に話しかける理由がなんなのか、それもいかにも堅苦しいというかつまらない質問ばからり投げ掛けるのはなぜか、それがわかったのだ。


父は、娘とコミュニケーションを取るために質問するのではなく、
質問することによって、娘を気にかける父親だと表現したいのだ。
パフォーマンスである。

だから私の答えなど覚えていない。
だって気にかけた、という事実がのこればいいのだから。

だから父は私につまらない質問をし、だいたいは「いいか、なんたらかんたら云々かんぬん、○○がこれからの社会で…」とか説教に着地して、私をうんざりさせるのである。私がうんざりした顔をしているのは、おそらく気付いていない。
なぜなら、父の目的はコミュニケーションではなく、父親らしいことをする"事実を残すこと"なのだから。

しかし、私は"父親らしいことをする"という目的は、それこそ父性愛だと思っているので、特に、「私は父に愛されていないっ!泣」
とか思ってはいない。
他の家族はどうか知らないが、私は父親というものに、いわゆる母性愛みたいなものは無いと思っているので、社会的な理由から子供を愛すると思っている。
だから、父親の責任として家族を養い、父親という肩書きがあるから子供の教育を考えてみたり、キャッチボールをするのだ。
別にそれでいいと思う。

ただ私が腹のたつのは、定年まで働いたことで父親の責任は果たしたのだ、とその事実に誇りをもっていれば、わざわざ"父の威厳"を示すための「仕事はどうだ」「資格を取れ」という説教風のコミュニケーション活動をする必要はないはずなのに、そこに気づかないこと。
自分は十分に家族のために尽くした、という自信が自分にあれば十分じゃないか。
なぜ"例えみんなが知らなくても自分は知っている"と思えないのか。自分で合格点が出せるのなら、わざわざ威厳っぽいものに頼らなくても良いのに。

つまりそこなのだ。これが父が安いキャッチコピーを口にするところに繋がるのだが、安いキャッチコピーを"おればどう思うか"を通さずに、自分じゃなくて、"一般的に言われていること"を基準に測ろうとする。おそらく世の中の大多数が賛成する指標じゃないと測っちゃいけないと思うのか、自分の中に確固たる物差しが無いように見える。
みんなはこうでも、自分は自信を持ってこう思う。っていうのがない、無くてもいいけど、みんなが思っていることと同じようにそう思うのには、自分なりの理由があるから、っていう風にも思えない。

だから妙なパフォーマンスをすることになるし、結果、娘の目には威厳とは反対方向に向かっていると映る。

しかし、これを口で説明しても、きっと父には理解できないんだろうな。