日記

日記です

元ラッパー 辞めそう

「なんかハゲキ◯ガイ泣いてない?」

夕方オフィスに戻ってきたコンサバ女子からそうラインが来た。
ハゲキ◯ガイとは私たちのライン上での元ラッパーの呼び名である。

業務終了時間少し前から、元ラッパーと50歳女部長は出入口前の会議室で面談を行っていた。

オフィスにはぼそぼそと話し声は聞こえるものの、内容までは聞き取れない。

この一時間ほど前、副社長が外出するとき、元ラッパーのところへ来て「体調大丈夫?頑張ってね!」と意味深なことを言い出ていった。

たしかに今週の元ラッパーはストレスフルだったかもしれない。
火曜日の午前中は、おそらく、私が辞めることを部長から告げられ、その日の午後は会長とわざわざ外で面談していた。

そして木曜日は、疑惑の多い「自宅勤務」の申請で、面倒なルールを課せられ、とうとう部長からもキレられる。(元ラッパーがあまりに横柄な態度だったので当然だし、今さら?キレるのおせーよという感じだが)

そして昨日、金曜日は、(コンサバ女子からの情報によると)元ラッパーはめずらしく始業30分以上前に来ていたようで、コンサバ女子がオフィスに入ったところ元ラッパーが部長に「ありがとうございます」とか言っていて、コンサバ女子の存在を認めるとシーンとなった、そうだ。

コンサバ女子の先輩も、昨日の部長のキレ方を見て、元ラッパー辞めそうだ、と思ったらしい。

しかし、

私はこれらを見て、"元ラッパーも事の重大さを感じた"とは思わない。

単に、最近想像以上に会社の居心地が悪くなって、おそらく、今まで生きてて"アウェイ"な状況になっことがないから辛くなっちゃった、というだけだろう。
そこに、後悔や、反省、罪悪感は皆無だと想像する。
(後悔、反省、罪悪感、を感じられる人間ならそもそもレイプをしない)

元ラッパーは、絶対にイジられキャラにはならない、上から目線でイジる方である。
会社でもどこでも常に堂々としていて、自信家で意見が衝突した時は、口調や態度に不満を隠さない。おそらくそうしたマッチョな態度は、元ラッパーの理想とする男性像であり、それを見事にトレースできている自分が好きだっただろう。

しかし、オフィスでの不祥事が明るみに出た今は、また以前のような振る舞いをしようにも、なかなか上手くいかない。

部長は気まずいのか、元ラッパーを可愛がってただけにコンサバ女子に性欲を抱いていたことが相当ショックだったのか、格段に元ラッパーに話しかけなくなったし、私は私で完全にシカトしているし、私が少しキレて以降は、部全体の会話が半減した。

オフィスはシーンとしていることが多い。

元ラッパーが何か言っても私と部長は無反応で、それを拾うのは、40歳男性と40代女先輩となるが、シーンとしているせいか40歳男性はいつも眠そうだし、私が部長の話を拾わなくなって会話の矛先がいつも向けられる女先輩は、さすがにコミュニケーション疲れが見える。

例えば私なら、パッとしない状況や、理想の私になれない自己実現できない会社、というのは今に始まったことではないし、会社にそこまで求めていないので、シーンとしたオフィスも、つまんないけど楽でいい。
しかし、会社と自己表現が結び付いているようなタイプの元ラッパーにとっては、"俺らしく"振る舞えない場所で1日の大半を過ごすことはかなり苦痛なのだろう。

それに、性格的にも我慢ができない、自制心の乏しいタイプである。
多少の我慢を強いられるだけでもストレスフルで耐えられないのだろう。

今までは「自宅勤務」も音声のみのスカイプを繋いでおけばOKで、部長の寵愛を受けていたからこそ、なあなあにやってこれた。それなのに、急に今後は1日のスケジュールを開示して、アプリでその日の仕事の出来具合を共有し可視化する、となれば面倒な事務作業が増えるし、サボっているのがバレるのだ。

そうした生活が今後続くと思うと、耐えられないのだろう。

そうしたわけで、元ラッパーは辞めることにしたのだろう。
本当に身勝手で幼稚な野郎である。