日記

日記です

サブリナ メモ(ネタバレ含)

海外マンガ読書会に行った。今回の題材はサブリナ。

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漫画ながらブッカー賞ノミネートになったらしく、ハヤカワから出ている。

ストーリーについて

時間がなくざっと読んだ程度だったが、図らずして、この漫画で描かれる「民衆」みたいな集団がニュースをざっくり消費する感覚で漫画を消費したので、ここに描かれる顔のないネット民を疑似体験みたいな漫画。

ある事件がきっかけで、周囲の人々がSNSに巻き込まれていく様を描いた、というあらすじは知っていたので、話の筋としては想像できる範囲だが演出が意外。

さらには陰謀論者によってニュースは政府の陰謀によるでっち上げとまで語られ、一部から被害者周辺の人物がバッシングを受ける。セカンドレイプ状態。(陰謀論をよく知らないのでここは「へーそうなるんだ」程度の感想)

ネットでバズる衝撃ニュースの背景に、実際に生きて生活している個人がいることが描かれ、行動や言動からは内面が計り知れない演出になっているが、それがまさにご近所さん、隣人程度の距離感を思わせリアリティがあった。

残忍な殺人事件の被害者が、アベンジャーズなどと同列に消費されるネット社会(というかもはや社会なの?)を分かりやすく描いている。

特に、安っぽいほっこりニュースと同じ一覧で殺害ニュースが並ぶグロテスクさ。

(このほっこりニュースもうまい具合に“いいハナシ”に疑問符が付く内容) 

犯人が陰謀論にハマっている近所の青年だが、そもそも陰謀論が社会の不和に起因しているので、うっすらとジョーカー的な加害者に見える。

描き方

顔が無表情のことがほとんどで、笑っているのか悲しんでいるのかほぼ読み取れない。

ネット等に流出する撮られた写真のみ人間味あふれるものになっている。

正方形のマスが並ぶ画面、見慣れない。

絵コンテのようで映像を見ている雰囲気があり、日本の漫画に慣れていると違和感があるものの、ページ1枚1枚が絵としても完成しておりきれい。

線も人も平たんに描かれる。(意図的だろうとのこと)

UFOの絵があるらしい。

サブリナやサンドラの部屋には写真があるが、テディが身を寄せるかつての同級生カルヴィンの家にはない。

カルヴィンは妻・娘と別居or離婚している。

冒頭のフェイクのリンゴや、銃などどこかで使えそうなアイテムを出しながらオチや山場に使わないところや、陰謀論をブラックユーモアで描かないところ、品がいいと思った。

その他

冒頭でサブリナの家を訪ねた妹のサンドラがリンゴを手に取り「フェイクだ」というのが示唆的。(最初のページは不吉な予言のようなセリフも多い)

後半はサブリナの恋人で心神喪失ぎみになったテディの読む絵本に「まちがい探し」が出てくる。個人的には絵本にメッセージ性を感じる。

漫画は誰目線というのがなく、主人公らしき人物はカルヴィンと思われるがほぼ平等にそれぞれの生活が描かれる。

しかし、唯一絵本だけはテディがみているページを私たちも同じようにみることができる。

サンドラは清掃の仕事の傍ら本を書いている。「いい感じの虚しさ」な内容の小説っぽい。 

そのサンドラが友人に誘われグループセラピーのようなものに行くが、いまいち効果を感じないしハマらない。(そんなサンドラが好きになった)

カルヴィンがほぼ連絡を取っていなかったテディを預かることが疑問だが、後半で、あれだけ家族の引っ越した先に家を借りようとしていた彼が、娘宛のプレゼントで失敗し、それを元妻にきつく指摘されるとあっさり引っ越しをあきらめ、長期で移住する仕事に転換する切り替えの早さを見るとちょっと納得がいく。

プレゼントのへまはそれだけ娘を軽んじているわけだが、彼の言い分ではプレゼントの義務を果たしているのだから問題ないはず、とのこと。つまり、彼にとっては娘にはプレゼントを贈るべきだし、家族とは近くに暮らすべきだし、旧友は助ける「べき」なのだと思う。

だから、カルヴィンは心神喪失気味の友人の部屋の世話や食べ物の世話はするが、テディに悪影響を与えそうなものは屋根裏に隠す。(銃を隠したりラジオを隠したり、そしてすぐ見つかる)

解決策はなるべく最短で低コストな方法をとり、根本解決は試みない。

参加者の指摘で気づいたことが多いが、例えばカルヴィンは後半社内アンケートで大幅に嘘をつく。しかし、思い返せば社内では小さな嘘(真実と異なること)は頻繁についていた。

主催者パワポには、舞台となるアメリカ北西部のおとなしい人間性が描かれているとのこと。

主催側の翻訳家の女性(今回の翻訳者ではない)によれば、田舎で白人が多く保守的な印象だそう。

カルヴィンは軍の情報部におり、軍のシステム担当という感じ。日本で言えば、田舎に住む公務員の男性だろうか。保守的で「こうあるべき」に忠実な人物が想像できる。父を連想した。(公務員ではないが)